スペシャル座談会

これからの農業と
クロスエイジのビジョン

農業の価値と農業の社会的地位を高め、農業を魅力的な産業へと発展させることを目標に、流通構造や体制に変革を起こし続けるクロスエイジ。
自ら作り、自ら販売し、自ら農家をプロデュースするプロフェッショナルたちが考える農業の未来とは?
そのイノベーションの軌跡と今後のビジョンを語ってもらいました。

Crosstalk Member Profile

取締役
営業グループ グループマネージャー
深谷 怜さん

東北の大学を卒業後、クロスエイジへ入社。九州での成功モデルを東北へ展開し、規模拡大や販路開拓に従事。出身地、秋田県の「農業を強くしたい」という思いのもと、生産現場から流通までをつなぐ「農業総合プロデューサー」として東北に恩返しすることを目標としている。

流通営業グループ
第1チーム チームリーダー
山口 和洋さん

12年間飲食店経営をした後、食の原点である「生産者」と深く関わることが出来るクロスエイジへ入社。スーパーやカット工場、漬物店など既存の取引先への商材提案や出荷整理を行い、生産者と販売者の橋渡しを担っている。

流通営業グループ
第2チーム チームリーダー兼新卒採用担当
草野 空太郎さん

「農家と関わり、農家が儲かる存在になれば、農業はもっと魅力的になる。」をモットーに、流通営業として約20社の取引先様への提案・販売を行いながら、各仕入れ先様への状況確認、情報連携を行なっている。

流通営業グループ
第2チーム サブリーダー
稲葉 剛太さん

新規取引先開拓を中心に、新商品の開発や仕入れ先の開拓に従事。青果業界の小手先だけの営業や、個人に依存しがちな現状に課題を感じ、営業活動が生み出す力で社会課題を解決できる営業のプロフェッショナル集団を目指している。

最近の農業の課題は?

山口さん

今、気候がどんどん変わってきていますよね。分かり易い例で言うと、去年、夏場はトマトが高くなって、1000円という事例が出てきました。今から近い将来、当たり前に採れている地域の野菜が採れなくなって、違う野菜に変わるという現象が起きてくると予想しています。そうなった場合、今の相場で戦ってる農家たちはかなり掻き乱される。且つ、技術がないと、もう栽培できません。という農家も出てくると思います。

深谷さん

そうですね。そして、農家の高齢化が進んでいるので、確実に農家は減ると思います。今、農家へいろんな補助金だなんだと、何となくの延命措置が続いている状況ですが、仕事ができなくなって土地が余る。それを力のある法人等がしっかりと集約して、それが日本にもう少し増えて、日本の野菜の供給が保たれればいいよね。という希望を抱いている状況であることは間違いないと思います。

課題に対して、どう向き合っているのか。

深谷さん

これまで、夏野菜の供給を青森や北海道が支えてきましたが、中央高地や標高の高い所でも、この50年くらいで気温が高くなり、作れなくなってきました。じゃあ、北海道まで行きますかというと、野菜って値段がシビアなので、北海道まで行ってしまうとコストが合わない。だから、中間地点の青森が挙がってくるのですが、去年、過去3、40年見た中で、8〜9月の気温は茨城と青森がほぼ同じでした。なので、これから夏に野菜、どこで誰が何を作るの?みたいなことが起き始めてますが、意外と標高が高ければできたりするので、九州でも阿蘇山に近い場所で作ってみるとか、大分の方で作ってみるとか、そういうことができたりします。例えば、青森はこれまでリンゴの産地で有名でした。それが今、リンゴの木を切って何を作っているかというと、シャインマスカットを作っているんです。リンゴより単価も高いですし、暖かくなったんでできるようになったんですね。気候に応じて移り変わりもできてきている。だから、産地も変化している。これをきちんとキャッチアップしてお客さまに伝えるというのも、僕らができることかな。

草野さん

これは今、僕が考えてることなのですが、九州外の農家さんとの付き合いが増えてきているので、さらに関係性を深めたい。そうすることで、関東や関西、東海だったり、お客さまにより近い距離の農家さんの商品をバイヤーに提案できるし、物流コストが下げられる。2024年問題にも少しは貢献できるのかなと考えています。

稲葉さん

僕は販売の面で課題というか、バイヤーが取ってくれたはいいけど、取り扱いの量が増えないとか、もしくは、だんだん減っていくということがありました。店舗が売り切ることができない、その先のためにどうしたらいいかなと手法をいろいろ考えて、試食販売というアプローチを『スーパーマーケットどんたく』さんでやりました。

草野さん

そうそう。結局バイヤーが良いと思っても、バイヤーがその意図をお店にきちんと伝えられるかという問題と、仮に伝えられたとしても、お店がそれに応えられるか、みたいなところがありますからね。単純に置いていても売れる商品もありますが、この商品はお店として力を入れて売った方がいいよね、みたいなコンセンサスがないと、どうしても続かない。我々が仕掛ける商品においては、試食販売を行うことで事例ができてきたものもあるので、実施できるところでは積極的に取り入れたい手法ですね。

深谷さん

一般的に言えば、マネキン販売という委託業者はあります。ただ、僕らがやる意味というのは、データが取れる。実際に現場に行って、商品を食べてもらい、どのくらい売れたというエビデンスは、数字の世界の人たちに継続を判断する材料になりますし、逆に他店舗にも突きつける武器にもなる。あと、これは気持ちの問題ですが、そこまでしてもらったと思ってもらえる。これも一つのポイントですよね。

クロスエイジの成功事例とは。

深谷さん

今から約12、3年前にスタートアップのネギ農家がいました。理屈としては凄く単純で、ネギの栽培を15ヘクタールやっていました。でも、そんなに土地も余ってるわけではない。けど、これからもっと稼ぎたい。となったら、土地を広げるしかない。でも、土地を広げることができない。となれば、ネギに付加価値を付けてネギの単価を上げるしかない。付加価値とは何なのかと考えた時に、これから人口も減って、核家族化で、世帯の人数も減っていく中で、1本買っても使い切れない。買ってすぐ使えたら楽だよね。というところから着想してスタートしたのが、「カットネギ」という商品の始まりです。
販路については、最初は業務用からスタートしました。例えば、うどん店に行けばネギをかけたりしますよね。スーパーに行けば、お弁当にちょっと乗っていたりとか。肉コーナーに行くと、肉にもちょっと乗っていたりとか。そういうところから販路を開拓していきました。そこから、スーパーの野菜コーナーへ拡大して、ネギをカップに詰めた「カップネギ」が今シェアが多くなってきている状況です。

草野さん

私が聞いた反響の中で多かったのは、やはり人件費削減。その次にリスク分散。包丁を使うと手を切ることがあるから、そもそも包丁を使うオペレーションをしたくないという、飲食店が結構あるんですよ。特にラーメン店とかはすごく便利が良いと思います。ただ、いざ使っていくと、より品質の良いものが求められる。鮮度感だったり、風味とか。要望が出るからには応えていくのが我々の仕事。こんな話が出ていますとか、もっとこうできますか?というニーズをきちんと産地に共有する。でないと、我々がいる意味がないですし、そこは、お客さまの声に真摯に耳を傾けながら対応していかなければならない部分だと思っています。

深谷さん

ヒットに至った理由も品質だと思います。農家も自分たちで作ったネギがカットされ製品になるので思い入れが違う。ずっとネギを作っているので、ネギに対する経験値というか、その日ごとにコンディションが違う野菜の扱い方をよく分かっている。だからカットしても品質が良い。競合も多いですが、「いいよね、この農家のカットネギ」という声が徐々に広がって、参入障壁となったのが一番の強みなのかな。それで皆さんにご愛顧いただいているのだと思います。

クロスエイジのビジョン

山口さん

今、我々がやってるのは、相場に左右されずに、農家も取引先も安定した仕入れができて、原価計算がし易い方法。農家は収支計画を立て易いですが、当社も利益を上げなければいけない。その中で当社の指針として次の次のフェーズぐらいで掲げてる未来が、スター農家との共同事業。というのを第3フェーズぐらいに設定しています。それは、どういうことかというと、量をある程度動かしていくようなシステムの構築。スター農家と共同事業を立ち上げて子会社を作る。そこに物を集めて、スケールメリットを作って流通させていきましょうというのが、次の次のフェーズの構想です。今、農福連携が注目されていますが、A型B型で生産性の課題も多い。採算が取りづらいというのが現状にあったりする中で、共同事業として一つの会社としてやっていくというのは、今後、我々がやっていかなくてはならない未来だと思っています。

深谷さん

この商売は持ちつ持たれつで、農家が利益出ている商品でないと継続しません。これやってても赤字になるな。というものはそもそも取引がなくて、やったとしても、すぐ終わるんですよね。それって僕らにとっても損なんですよ。だから農家にとってもしっかり利益が出て継続していけたら、僕らも売れる。さらにその商品が、お客さまにとっても利益になるものであれば、みんな良いですよね。しっかり農家が儲かって、お客さまも儲かる。この当たり前を作らないと、僕らも生きていけない。真っ当な条件だと思うんです。まあ、それを作るのが難しいんですけど、できる限りみんなが上手くいくように再配分していくのが、今の僕らの介在価値なのかなと思います。がっちり農家と取り組んで、市場流通でもない、JAを通していない。しかるべき場所へ着実に売っていけるという、うちとしては本当に面白い時期に入ってきていますし、新たな未来へ片足を踏み入れた状況だと感じています。